日本食の忘却と世界的な認知
ご存じのように、いま、日本人は日本型の食生活を忘れかけています。
自国の食文化なのに、触れる機会が減ってきています。
- ご飯をちゃんと炊ける人
- 味噌汁をちゃんと作れる人
は、はたしてどのくらいいるでしょうか?
そのいっぽうで、世界中の人々が、いま、日本食に興味を持ち、とてもリスペクトしてくれています。
これは嬉しいことですね!
日本食の世界的広がりとその歴史
ここで少々、日本食が海外に広がった様子について調べてみました。
昨今は、どの国でもわりと美味しい日本食を食べることができるようですが、昔からそうだったわけではないようです。
日本食の海外進出がいつごろから始まったのかは、定かではありませんが、明治の文豪、森鴎外や夏目漱石がドイツやイギリスに留学していたころには、日本食をヨーロッパに届ける専門の会社がすでに存在していたという話です。
昭和の終わり、つまりバブルのころには、世界のたいていの国に大なり小なり日本食の店ができていたように思われます。
ただし、最初はもっぱら「寿司」「天ぷら」「すき焼き」ばかりでしたけど。
平成に入ると
- 日本の焼肉
- 串揚げ
- 日本のカレー
- 日本のラーメン
などの店も海外に出るようになりました。
そのころから、日本人でない人が「ナンチャッテ日本料理店」「トンデモ日本料理店」を開くことも増えました。
ナンチャッテ系、トンデモ系の店は「将軍」「サムライ」「忍者」といったベタベタな店名を使うことが
多かったようですよ。
日本人の少ない国や地域では、こうした「ナンチャッテ日本料理店」「トンデモ日本料理店」でも客に困らなかったのでしょう。
日本政府による日本食認証制度の挑戦と挫折
「ナンチャッテ日本料理店」「トンデモ日本料理店」に対抗するため、2006年だったと思いますが、当時の日本の農林水産大臣が、「ちゃんとした日本食を出す海外店を認証する制度」を作ろうと言いはじめました。
ところが、ワシントンポストというアメリカの新聞に、「日本政府は、寿司ポリスを世界に派遣しようとしている!」と書かれてしまったために、なんと炎上。
結局、この計画は挫折しました。
「寿司ポリス事変」として知られています。
じつは、海外にある自国の料理店を認証する制度は、韓国料理やイタリア料理ですでに行われているようです。
なのに日本食だけが炎上したというのは、ちょっと不公平ですよね。
ま、それだけ日本食の広がりに勢いがあったという証拠なのかもしれません。
日本食の国際化と逆輸入の現象
いっぽう、海外で生まれた日本食が日本に逆輸入されたケースもあります。
代表的なのは1960年代に発明されたカリフォルニアロール。
本来の巻き寿司は海苔を外側に巻きますが、カリフォルニアロールは内側に巻きます。
寿司に不慣れだったアメリカ人の多くがカリフォルニアロールのお陰で寿司ファンになったといいます。
時代が下り平成の半ばごろ、ニューヨークあたりでは「アメリカ人の有名シェフによる、アメリカ人のための高級日本料理店」が人気を博すような出来事もありました。
海外で誕生した日本料理店が有名になり、日本に進出(開店)するという出来事もありました。
俳優ロバート・デ・ニーロ氏がオーナーをしている日本料理店といえば記憶している人もいるのでは?
日本食の誤解と正統性の追求
さて、さきほどの「ナンチャッテ日本料理店」「トンデモ日本料理店」ですが、こうしたところで出る料理には、実際、とんでもないものが多かったそう。
ご飯に醤油を大量にかけて食べるとか。アイスクリーム入り味噌スープとか。
(前者は絶滅したようですが、後者は案外ウケて今も見かけます)
「こんなのが日本食だと思われたらヤバイ」と、農林水産大臣でなくても、日本人なら、みんな思ったでしょう。
当時はたしかに、「こんなトンデモ料理に出会った!」的な情報がネットで飛び交い、一種、笑いのタネにもなっていましたね。
しかし…。あれから世界の人々は日本料理をかなり勉強したようです。
「ナンチャッテ日本料理店」「トンデモ日本料理店」も目に見えて減りました。
今では下手をすると「日本人のほうが日本料理を知らない」という逆転現象も起こりつつあります。
海外の日本食を、笑えなくなりました。
そうこうするうちに、2013年には日本食がユネスコの無形文化遺産になりました。
日本食はここからさらに世界に広がりますが、続きはまた別の機会に。